京都府にある綾部小学校児童の登校風景 撮影:宮田
通学路の子どもの安全について、産経新聞の取材を受けました。子どもが通学路で巻き込まれる危険には、犯罪・災害・交通事故などいくつかありますが、それらを防ぐためには、子ども自身が自分で自分の命や体を守る力をつける安全教育が必要です。また、保護者や地域の大人による見守り力、環境の整備などが必要となります。今回は地域の大人による見守り力について記事の一部をご紹介します。
子どもを守りたい:「見守り隊」の力で食い止め
京都府綾部市の中心部。午前7時半過ぎの静かな商店街に突然、にぎやかな声が響いた。市立綾部小学校に向かう集団登校の一団だ。蛍光色の緑のベストを着用した「見守り隊」の男性(74)が「おはよう」と声を掛けながら横断歩道に黄色い旗を渡し、子供たちを渡らせる。「毎日、元気に学校行ってくれるとうれしいね」と笑顔で見守る。
商店街の道路は道幅5メートルほど。幹線道路ではないが、信号の数が少ないことから地元ドライバーの交通量が多い。しかし、ガードレールや縁石はなく、すれ違う車が歩道にはみ出し、登校する子供をかすめるように去っていく。
同校の大槻富美雄校長は「見守り隊の方がいなければ危なくて。ここに立ってもらえて本当にありがたい」。小学1、3、5年生の子供を持つ母親(35)も「亀岡の事故もありましたし、少しでも大人の目が危険を排除してくれれば」と信頼の目を向ける。
見守りの旗を手にする校長先生 撮影:宮田
10年間事故ゼロ
この地域で見守り隊が結成されたのは10年前。平成14年1月、校区内の通学路を登校する児童の列にワゴン車が突っ込み、小学生ら12人が死傷する事故が起きたことがきっかけだった。
事故は、運転手の男が故意に突っ込んだことが原因だったが、すぐさま地域では「通学中の子供を守るために何かできないか」と活動を開始。有志が登下校時間に児童を見守ったが、自治会や保護者など続々と見守り隊員が増え、現在では綾部小学校の校区に約200人が名を連ねている。このうち約半数が毎日、校区に立つ。全校児童数は598人。6人につき1人の大人が見守っていることになる。
見守り隊は、交通量の多い所ばかりではない。見通しの悪い細い路地や下り坂が合流する信号のない5差路など、見守り隊員同士が普段から危険箇所を報告し合い、必要と判断した所に立つ。同小によると、見守り活動が始まってからの10年間、登下校中の交通事故はゼロだという。
登校中の中学生の乗る自転車をかすめるように走り去っていく自動車 撮影:宮田
心理的ガードレール
綾部や亀岡の事故現場には、いずれもガードレールが設置されていなかった。ガードレールなどのインフラ整備は有効だが、「ガードレールを付けたことで逆に道幅を狭めて危険が増したり、道路沿いの民家に不便を掛けたりすることもある。どこにでも付けられるわけではない」(京都府道路管理課)という。
「そこを補うのは人の手と目です」と話すのは、NPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」(東京都文京区)の宮田美恵子理事長。大人が蛍光色のベストを着用したり旗を持ったりして道路に立つことで、ドライバーへの注意喚起になり、心理的な「ガードレール」にもなり得る。
「多くの目がある所では悪いことはできないという心理が働きます。地域の見守る力は、交通事故はもちろん、犯罪なども含め、大きな抑止力につながります」と宮田理事長。「見守ってくれる大人の姿を見て育った子供たちは、大人になって運転するときに無茶はしない。長い目で見ても非常に大きな効果があります」と話している。
事件契機に全国に広がり
「見守り隊」は全国的に広がっている。平成17年、広島県と栃木県で起こった女児連れ去り殺人事件をきっかけに、児童の安全確保のため、文部科学省が各教育委員会などに「登下校時における幼児児童生徒の安全確保について」と題して設置を要請した。PTAや自治会などが中心となって、地域で登下校中の児童を見守る活動が盛んになった。佐々木詩氏